~歯の寿命を左右する「噛む力」という視点~
「歯を失う原因は歯周病ですよね?」
もちろん歯周病は、日本人が歯を失う大きな原因の一つです。
しかし、歯を長く守るためには、歯周病だけを治療すればよいわけではありません。
私たちが日々の診療で大切にしているのが、**「歯に加わる力」**という視点です。
歯周病による炎症をコントロールするとともに、噛み合わせや歯ぎしり・食いしばりなど、歯に加わる力を適切に管理することが、お口の健康を長く維持するためには重要だと考えています。
問題なのは「噛むこと」ではなく、「過度な力」です
私たちは毎日食事をし、そのたびに歯を使っています。
通常の咀嚼では、食べ物がクッションとなり、歯根膜が力を吸収・調整することで、歯や顎の骨に過度な負担がかからないようにコントロールされています。
一方で、歯ぎしりや食いしばり(ブラキシズム)では、食べ物が介在しない状態で強い力が歯に加わります。
このような力は長時間続くことも多く、歯や歯を支える組織、被せ物や詰め物などに大きな負担となることがあります。
歯周病と「力」が重なると、歯を守ることが難しくなる場合があります
歯周病は、細菌による炎症によって歯を支える骨が失われる病気です。
そのため、まず行うべきことは、原因となる細菌性バイオフィルムをコントロールし、炎症を改善することです。
しかし、歯周病によって支持組織が減少した歯では、過度な噛む力が加わることで、歯の動揺や咬み合わせの問題が目立つことがあります。
そのため当院では、歯周病の治療だけでなく、噛み合わせや歯ぎしり・食いしばりの有無も診査し、お口全体を総合的に診断しています。
インプラントは「咬合支持」を回復する治療です
歯を1本失うと、その歯が担っていた噛む役割を、残っている歯が補うことになります。
その状態が長期間続くと、一部の歯に負担が集中し、歯や歯周組織への負荷が大きくなることがあります。
インプラントは、失われた歯を補うだけでなく、失われた咬合支持(噛むための支え)を回復する治療でもあります。
咬合支持が回復することで、お口全体の噛み合わせのバランスが改善し、残っている歯への負担を軽減できる場合があります。
当院でも、歯周病の炎症を十分にコントロールしたうえで、インプラントにより咬合支持を回復し、お口全体の力のバランスを改善することで、過度な負担を受けていた歯の動揺が軽減した症例を経験しています。
もちろん、これはインプラントだけによるものではありません。
歯周病治療、適切な噛み合わせの管理、必要に応じた歯ぎしり・食いしばりへの対応、そして継続的なメインテナンスを組み合わせることで、お口全体の安定につながると考えています。
私たちは「お口全体」を診ています
インプラントは、歯がない部分だけを治療するものではありません。
当院では、
- 歯周病の状態
- 噛み合わせ
- 歯ぎしり・食いしばり
- 残っている歯への負担
- 将来のリスク
まで含めて総合的に診断し、一人ひとりに適した治療計画をご提案しています。
私たちが目指しているのは、1本の歯を治すことではありません。
10年後、20年後も、ご自身の歯でしっかり噛み、食事を楽しんでいただくこと。
そのために、細菌による炎症だけでなく、「歯に加わる力」にも目を向けながら、お口全体を守る診療を大切にしています。
次回のコラムでは
「ブリッジ・入れ歯・インプラント、それぞれの違いとは?」
それぞれの治療法の特徴だけでなく、「残っている歯を長く守る」という視点から、わかりやすく解説します。
