~「1本くらい大丈夫」が、お口全体に影響することがあります~
「奥歯を1本失ったけれど、反対側で噛めるから大丈夫。」
「見えない場所だから、そのままでも困っていない。」
実際に、このようにお話しされる患者さんは少なくありません。
確かに、歯を1本失っても、すぐに食事ができなくなるわけではありません。
しかし、お口の中では少しずつ変化が始まっています。
1本の歯にも、大切な役割があります
私たちの歯は、それぞれが噛み合わせの中で大切な役割を担っています。
1本の歯を失うと、その歯が担っていた役割を残っている歯が補うことになります。
そのため、お口全体の力のバランスが変化し、一部の歯に負担が集中しやすくなります。
最初は不自由を感じなくても、その状態が長く続くことで、残っている歯への負担は少しずつ大きくなっていきます。
負担が集中すると、さまざまなトラブルが起こります
一部の歯に負担が集中した状態で、歯ぎしりや食いしばり(ブラキシズム)などの過度な力が加わると、歯や歯を支える組織への影響が大きくなることがあります。
また、歯周病によって歯を支える骨が減少している場合には、通常の咀嚼による力であっても負担となることがあります。
その結果、
- 歯が揺れる
- 詰め物や被せ物が外れたり壊れたりする
- 歯にヒビや歯根破折が生じる
- 歯周組織への負担が増える
- 噛み合わせのバランスが変化する
などの問題につながることがあります。
「噛める」と「負担がかかっていない」は違います
患者さんから、
「ちゃんと噛めています。」
と言われることがあります。
もちろん、それは良いことです。
しかし、「噛めること」と「歯に無理な負担がかかっていないこと」は同じではありません。
一部の歯だけが負担を受け続けている場合、ご自身では気付かないうちに歯や歯周組織へダメージが蓄積していることがあります。
症状が現れたときには、すでに大きなトラブルへ進行していることも少なくありません。
私たちは「次の1本」を失わないための治療を考えます
当院では、失われた歯だけを診ることはありません。
その欠損によって、
- どの歯に負担がかかっているのか
- 今後どの歯にリスクが生じるのか
- 10年後、20年後も安定した噛み合わせを維持できるのか
という視点で診査・診断を行います。
必要に応じてインプラントを選択するのも、失った歯を補うことだけが目的ではありません。
残っている歯を守り、これ以上歯を失わないためです。
次回のコラムでは
「ブリッジ・入れ歯・インプラント、それぞれの違いとは?」
それぞれのメリット・デメリットだけでなく、「残っている歯を守る」という視点から、それぞれの治療法を分かりやすくご紹介します。
